先日、弊社が主催しておりますTRCC(リユース経営者勉強会)での会員様企業の事例発表がリユースショップのファン客作りについてとても参考になりましたので、読者の皆さんにも共有させて頂きたいと思います。
その会員さんは、古着専門店を経営されていてコロナ禍の中でも安定して売上、利益を確保されていらっしゃいます。私から見てそのお店の強みは、お客様のコトをとても知っているという点です。
例えば、お客様から
「メルカリの売れ残りを持ってきました」
「もう疲れたからメルカリから全部引き上げます」
との声が増えてきたから、
「メルカリに疲れていませんか?メルカリの売れ残り全部買います」というインスタグラムの買取告知を出したり、
「大手チェーン店に持っていったら多くの商品が買取不可だった」
との声があれば、
「〇〇チェーン店で返された方へ」という内容で、動画を発信したりされています。
一つ一つの発信内容というよりは、とてもお客様のリアルな声を活用して、自社の情報発信に活かされている点がとても素晴らしいと思います。
意外とこの“お客様の声”あるいは、もっというと“お客様の本音”を聞き出せているお店は少ないのではないでしょうか。最近とてもよく感じるのが、このお客様とのコミュニケーションの質の差です。
繁盛店のスタッフさんにお客さんについてヒアリングしていると、最近はこんな理由で売られる人が増えてきています。とか、先日はこんなお客さんがいらっしゃいましたなど、お客さんとのやり取りの事例が具体的で豊富なのです。それに比べて不振店のスタッフさんは、作業にばかりを集中してしまいお客様の情報を得ていないのです。
このお店では、さらにあるZ世代の常連さんに
「このお店で安くで買って、全部ここに引き取ってもらって、ここをクローゼット代わりにしてるんです」という声をもらいました。この常連さんは、この古着店で古着を購入し、2~3回着た後、またこの古着店に売って新しい古着を買うというサイクルで、まさにクローゼット替わりにお店を利用されていたのです。
こういうリユースを取り入れたライフスタイルがまさに、リユースショップにおけるファン客の一つのライフスタイルだと思うのです。通常、リユースショップの売る客と買う客の重なり(売る行動も買う行動もとってくれるお客様)は、全体顧客の10%前後というデータがあります。そしてこの数字は、繁盛店になってくると、30%を超え50%近くになっているケースもあります。
売るのも買うのも同じリユースショップで行うと、結果的にLTV (Life Time Value(ライフ タイム バリュー)の略、「顧客生涯価値」という意味)が上がり、そのお店の利益を支えて頂ける貴重なファン客となっていきます。ある意味では、このリユースのライフスタイルを取り入れて頂くことこそ、リユースショップの一つの大きな役割かもしれません。
そういう意味では、自店の常連客やファン客がどうお店を使ってくれているのか?もしくは、どう使えばもっと楽しめるのか?役に立つのか?という情報を積極的に得にいくのは大切ですし、そのような情報を使って啓蒙活動を進めていくことがとても重要になってくると思います。
そして、既存客への提案も大切ですが、まだリユースショップを使っていない層へも、このようなライフスタイルの良さとか利点、を伝えていくのは、新規顧客獲得のためにも有効な手段になるのではないでしょうか。
ぜひ、一度自店の売る客と買う客の重なりをチェックされてはいかがでしょうか。
京都市出身。流通小売業界、住宅不動産業界、通販業界、飲食・食品業界のコンサルティングを経て、2000年に、リユース業界向けコンサルティング部門を立ち上げ、全国各地に600店舗のクライアントを持つ部門に育てる。元船井総研上席コンサルタント。リユース業界のエキスパートとして、株式上場企業など数多くの急成長企業を作り出してきた。後、2017年2月に船井総合研究所を退職し、2017年3月にコンサルティング会社(株式会社A−DOS)を設立する。 現在、「企業の”あり方”と”やり方”をつなげて、”理念”を”利益”に変える」をモットーにコンサルティングを行っている。リユース業界向けには、TRCコンサルティングを立ち上げ、リユース企業への幅広い支援を行っている。