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こんにちは。TRCリユースコンサルティングの千馬です。いつもお読みいただきありがとうございます。リユース業界専門のコンサルタントとして、日々、全国の買取専門店・総合リユース店の経営支援に取り組んでいます。
今回は、ある買取専門店を複数展開する企業様にて実施した、店長向けマネジメント研修の様子の一部をご紹介します。(実際は、約半年間に分けて、複数回のテーマ別研修を実施しています。)
「プレイヤー店長」から「チームを動かす店長」へのステップアップをテーマに、IR情報から読み解く業界動向や、実践型グループワークを交えて、多角的にマネジメント力を強化する機会となりました。
研修冒頭では、「リユース業界の今とこれから」をテーマに、大手リユース企業のIR資料や決算説明資料をもとに業界動向を共有しました。
業績好調の背景にある「高単価商材×査定力」の強化
ECとリアルのハイブリッド運営の進化
店舗スタッフの“査定スキル”が売上の源泉となっている構造
人的資本経営(人材育成)の重要性が増している
といった観点から、マネジメントの質がそのまま業績に直結する時代であることを確認しました。
これにより、参加者自身が「今、自分の店で起きていること」と「業界の潮流」とをリンクさせながら学びに臨む土台をつくることができました。
座学だけでなく、今回は全4テーマでのグループワークを実施。
店長としてのあり方や現場課題に向き合い、他者と意見交換をしながら視野を広げてもらう時間となりました。普段、どうしても買取専門店だと少人数の運営&他店舗との交流がしにくいため、このような研修の場を通じて横のつながりも広げて頂ける良い機会となっているようです。
理想の店長像や、今感じている悩みを共有しました。
「現場のことばかりで数字が追えていない」「スタッフの成長にどう関わるべきか分からない」といったリアルな声が多く出ました。
その一方で、「スタッフから頼られる店長になりたい」「現場と経営をつなぐ立場として機能したい」といった前向きな想いも共有されました。
KPI(重要業績評価指標)を分解し、自店の強みと改善余地を議論。
「成約率は高いが来店数が少ない」「LINE査定からの来店率に課題」など、それぞれの店舗で数字の課題が異なることを共有し合いました。
改善策として、「Google口コミを増やして来店数を増やす」「査定時に+αの提案を意識する」といった具体的な打ち手もあがりました。
「スタッフから見た理想の店長とは?」をテーマに、“OK上司”と“NG上司”の特徴を洗い出しました。ここでは書けないような内容も多々ございますが、このワークを通じて、どのような上長になればよいかという問いに対する気づきを得ていただくことが出来ました。
OKな上司の特徴:
ミスに対して責めるのではなく、次に活かす会話をする
店舗の数字を分かりやすく共有してくれる
自分のことだけでなく、スタッフに関心を持っている
NGな上司の特徴:
感情的で指示がブレる
自分ばかり忙しく、育成を放置している
指示はするが背景や意味を伝えない
こうした振り返りは、自分の接し方を客観的に見つめ直す良いきっかけとなりました。
買取専門店で頻発するトラブルについて、参加者同士で共有し合いました。
「査定後キャンセル時の対応」
「LINE査定と実店舗の査定額の差異」
「混雑時の対応遅れによるクレーム」
など、多くの店舗が同様の悩みを抱えており、潜在的に隠れているお客様の「不満の根っこ」と「次に活かす改善策」を話し合うことで、トラブルへの向き合い方が明確になりました。
また、トラブル事例を社内で集めることで、新人教育向けのコンテンツとしても活かせることから、トラブル対応事例集を整理するきっかけになりました。
研修後半では、成果を出している店長に共通する特徴として、以下の4点を紹介しました。
KPIに基づいて行動を決められる(数字に基づいた行動・PDCAの強化)
教育と数値をつなげてスタッフ育成を考えられる
お客様の“不満の芽”を早期に察知できる・お客様の声を集めることができ、店舗運営に活かすことができる
トラブルやイレギュラーを冷静に処理できる
これらはすべて、“自分が動く”だけでなく“人を動かす”ことを前提としたスキルです。
プレイヤーからリーダーへ視座を上げることが、店舗成長の鍵になります。
買取専門店におけるKPIの基本式はシンプルです:
来店数 × 成約率 × 平均単価 = 買取金額
しかし、多くの店長が「なぜ買取金額が増減したのか?」を感覚で捉えており、原因と打ち手のひもづけができていない現状があります。
そこで今回は、「数字を“分解”して考える」ワークも実施。
「来店数を上げるには口コミ強化が必要」
「成約率が落ちているのは査定スキルの差かも」
「単価が下がっているのは仕入れ対象品が絞られていないから」
といった具体的な“アクションに変えられる数値の捉え方”を共有しました。
最後にお伝えしたのは、店舗の成長を持続させるには、「属人化をなくすこと」が重要であるということです。
教育は“教え方の型”を持ち、再現性を高める
トラブル対応は“判断基準”を明文化する
売上分析は“問いの立て方”を習慣化する
これらを仕組みとして整えることができれば、店長が変わっても店舗力が維持・向上していきます。
今回の研修では、IRを通じた大局的な視点と、日々の実務に役立つ現場視点を行き来しながら、“考える・話す・仕組みにする”というプロセスでマネジメント力を磨いていただきました。
参加された店長の皆様が「数字を見る目」と「人に関わる姿勢」を一段高め、“スタッフとともに育つ店舗”を目指すマインドを持ち帰っていただけたことが、何よりの成果です。
引き続き、リユース業界の成長を現場から支えるパートナーとして、実践型研修を提供してまいります。
ご相談・お問い合わせはいつでもお気軽にどうぞ。
このブログが何かのお役に立てれば幸いです。
TRCリユースコンサルティング 千馬
熊本県出身。元船井総研チーフ経営コンサルタント。 船井総研入社後、住宅不動産業界、小売業界、サービス業界など約20業種のプロジェクトリーダーを務める。 大手SC店長勉強会講師、企業デューデリジェンス業務、戦略策定から実行支援まで経験を有する。 リユースチーム所属時は統括責任者として、総合、古着、ネット買取専門店業態のエキスパートとして全国に繁盛店を生み出してきた。 現在はリアル×デジタルのマーケティングをミックスさせ、新業態開発から既存店の活性化、社員教育まで幅広く対応。 リユース企業店長アカデミーTRPA(Tomorrow Reuse Professional Academy)を主宰。 《主なコンサルティング実績》 ・ リユース専門店(リアル)立ち上げ支援多数(15年以上) ・ ネット型リユース事業開発支援(30社以上) ・ 大手SC店長研修(500店舗以上の商業施設向け) ・ リユース企業デューデリジェンス業務(対金融機関向け) ・ 累計100社以上のリユース企業活性化支援 ・ 累計1000名以上のリユース業店長・マネージャー。店長候補スタッフの育成 ・ 年商1億円規模から年商200億円までのリユース企業の戦略立案及びアドバイス